基準看護・完全看護と入院付添費
1 入院付添費の賠償が認められるためには「付添の必要性」が必要
交通事故被害者の方が入院をし、近親者の方が入院に付き添った場合は、被害者の方が加害者に対して入院付添費の損害賠償請求をできる可能性があります。
しかし、被害者の方による入院付添費の損害賠償請求が認められるためには、被害者の方において付添が必要であったこと、すなわち「付添の必要性」が存在することが前提となります。
2 基準看護・完全看護の下だと「付添の必要性」が認められない?
入院付添費の賠償について加害者側と交渉をしていると、「被害者の方は完全看護の病院に入院しているので、付添の必要性はないと考えます。」という趣旨の主張がなされることがあります。
では、交通事故被害者の方が基準看護・完全看護の病院に入院している場合は、常に「付添の必要性」が否定されてしまうのでしょうか?
3 完全看護・基準看護の沿革
完全看護は、1950年に、入院患者の世話を病院の看護師職員で行うことを推進させるための制度として発足しました。
しかし、「完全看護」という呼称が、患者のあらゆる世話を看護職員が行うという誤解を与えかねないという指摘があり、実際にも看護職員だけで患者の世話のすべてを行うことは看護職員の人数的にも困難であるという状況がありました。
そこで、完全看護という名称は、1958年に「基準看護」という名称に変更されるに至りました。
4 基準看護・完全看護の下でも「付添の必要性」が認められる場合がある!
上記のような沿革からも明らかなとおり、基準看護・完全看護といえども、病院のスタッフが入院患者のあらゆる世話を行うことまでは想定されていません。
したがって、被害者の方が完全看護の病院に入院しているという事実のみでは通院の必要性を否定する根拠としては不十分であり、より実質的に「付添の必要性」を検討する必要があると言えるでしょう。
実際に、交通事故被害者の方が、基準看護・完全看護の病院に入院中であっても、医師の指示の有無、受傷の内容や程度、治療の状況、日常生活への支障の有無や程度、付添人が行った看護の内容、被害者の年齢などを考慮して、「付添の必要性」を認めた裁判例も少なくありません。
もっとも、「付添の必要性」があることの実質的な主張・立証をご自身で行うのは難しい場合もあるかと思いますので、入院付添費をしっかり賠償してもらいたいという方は、早めに交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。